■テニスGEEK通信(TENNIS GEEK NEWS)とは
テニスギアの「モノ」や「コト」を、深堀し、マニアックに、そしてGEEK(ヲタク)にお届けするコラムです。
ウインザーラケットショップ池袋店スタッフの中居が独自の目線で話題の商品を紹介します。
テニスに関する仕事をして30数年になる大ベテランですが、まだまだヤル気満々でテニスコートに立っているシニアプレーヤーです。
「ストリングの未来予想図」
ストリングはいずれ、ナチュラルとポリエステルだけになってしまうのではないでしょうか。
ナイロンを張っているトッププロはもしかしたら、0人になるかもしれません。
ATP、WTAトップ100のポリエステル使用率は100%(2017年USオープン時)で、ハイブリッドを含みますので、ナチュラル以外のハイブリッドをしている選手がもしかしたらいるかもしれませんが、単体でナイロンを張っている選手はトッププロでは0人です。(100位までの男女で)
ナイロンストリングの特性は、柔らかい、食い付きが良い、弾力がある、ポリエステルよりテンション維持が良いなどです。
ナチュラルガットの特性は、凄く柔らかい、非常に食い付きが良い、非常に弾力がある、すべてのストリングの中で最もテンション維持が良いなどです。
ナイロンストリングを凌駕している側面があります。
ポリエステルストリングの特性は、耐久性がある、スピンのかかりが良い、表面の摩擦が少ないのでスナップバック効果がある、スイングスピードのある方は反発力が上がるなどです。
ナチュラルは価格が高く、雨に弱い特性から贅沢なストリングと見られており、「自分のテニスにはもったいない」「まだ早い」「ナイロンで十分」といった声も中には聞きます。
でも一度ナチュラルを使った方はもうナイロンに戻れないと言う方が多数です。
もし今後ナチュラルの原価が下がるようなことがあれば、ナイロンの存在意義は無くなってしまうのではないでしょうか。
ナチュラルガットにおける話題で「雨の時はどうするの?」という疑問にお答えします。
ナチュラルガットは、牛の腸でできているので、水分を含みやすく、吸った後はよりが戻りささくれが出てきてしまいます。
ナイロンは水分を吸収しやすく、雨に濡れてしまうとテンションが大幅に落ち、反発力が失われます。
ナチュラルのように見た目の変化が起きないので、見過ごしてしまいがちですが、ナチュラルもナイロンも雨に弱いことではあまり大差は無いのです。
その点ポリエステルは水分吸収率が低いので、雨用としてポリエステル単体で張ったものを1本用意しておくと良いかもしれません。
ポリエステルストリングが発売された20数年前は、ヨーロッパの選手がスピンを多用し始めた頃で、ウエスタングリップでソフトテニスのようなグリグリのトップスピンを打っていました。
バックハンドも厚いグリップで、トップスピンを打つ選手が急激に増えた頃です。
私は、ウッドラケットでフラット打ちでテニスを覚えてしまったので、今でもウエスタングリップで握ることはできません。
ソフトテニス経験のある方を羨ましく思うときがよくあります。
シングルバックハンドも、ウエスタングリップで打つ選手も結構いて(クエルテン氏、エナン氏、ガスケ氏etc)
グリップチェンジをしないワングリップでプレーしている選手もいます。
ソフトテニス経験者はフォアもバックも握りを変えずに、軌道や当たる角度の調整の練習をすれば、遠回りせずに上達するのではないでしょうか。
ポリエステルの欠点である、テンション維持の低さに関して考えてみましょう。
本当のところはわかりませんが、私の経験の中でテンションの落ち具合は、ナイロンとポリエステルでほとんど変わらないと感じています。
私は、張り上げた時と、張り替える前に必ず面圧を計測しています。
1、2ヶ月使用して張り替える時の面圧はナイロンもポリエステルも5〜10くらい落ちています。
ポリエステルのテンション維持が悪いという風評は、ポリエステルとナイロンの特徴の違いから出てきているのではないかと思っています。
ポリエステルは、表面がツルツルで、ストリング自体がピンとしています。
ナイロンは、表面がざらっとしていて、ストリング自体はグニャっとしています。
茹でる前のパスタと茹でた後のパスタを思い浮かべてください。
ポリエステルは、ボールが当たると当たった部分の4、5本のストリングが横にずれてすぐに元通り戻ります。
ボールが当たった部分だけ、凹んでいるような感覚で、弾き出しも強く感じます。
打ち続けていると、ストリング表面にキズや汚れで、縦糸の動きが摩擦によってズレづらくなったり、ズレても戻りが遅くなったりしてきます。
そうなると、ポリエステルの特徴のスナップバックが急激に劣化し、性能ダウンを感じ取ってしまい、テンション維持が悪いと思ってしまいます。
一方、ナイロンは、ストリング面全体がくの字型に凹みます。
当たったボールの箇所を中心に弓矢の弓のように凹み、復元する力でボールを弾き出します。
テンションが落ちてきたとしても、凹み方が少し深くなるだけで急激に劣化したようには感じません。
逆に、楽に飛ぶように感じて張りたてより少し時間が経った方がよく感じる場合もあります。
ポリエステルとナイロンの特性の違いから、テンション維持の察知に差が出てしまうのです。
ポリエステルは時間の経過通りに正確にテンションロスを感じ取り、ナイロンは緩んできていても使えてしまうので、テンションロスに関してルーズになっているのです。
個人的に考えるポリエステルの今後の課題は、スナップバックの機能低下を防ぐことと、スナップバックを使わない柔らかいタッチショットをどう克服するかと考えました。
スナップバックの維持に関しては、ストリング表面にシリコンをコーティングしたもの(ブラスト、ポリツアーファイヤなど)が出てきています。
スナップバックは強い当たりに対して起こる現象ですので、ボレーやドロップショットなどの低速でスイングする場合はナチュラルやナイロンの凹み方が有効です。
テクニファイバーのHDMXは、一本のストリングの中で、ポリエステルとナイロンのハイブリッド化を実現、プリンスハイパーレスポンスはポリエステルの中身をくり抜いて衝撃吸収ジェルをインサートしました。
柔らかいタッチの実現化はすでに始まっています。
私たちアマチュアは、世界のトッププロにあこがれ、少しでも近づけるように、ラケット、シューズ、ウエアを真似し、フォームやフットワークを参考にしています。
この流れから、ストリングも真似するのは自然なことだと思います。
ポリエステルを一度も使ったことがない方、今年は是非チャレンジしてみてください。
いきなり縦横ポリエステルが不安な方は、ナイロンとポリエステルのハイブリッドが各メーカーから発売されてますので、縦ナイロン横ポリエステルで張ってみてください。
縦のナイロンが横のポリエステルの表面上をスライドする感覚がわかると思います。
これがスナップバックで、スピン性能が向上します。
ポリエステルの機能を理解した上で、次は縦横ポリエステルに変えていくのも良いと思います。
最後に実現化は不可能だと思いますが、ストリングを張った時に、スムース面とラフ面が違う性能のものがあったら面白いかと思いました。
卓球は、表と裏で違う種類のラバーを張り、回転のかかり方を変えて相手を惑わせます。
ストリングを縦に白黒ツートンにして、白はツルツル、黒はザラザラにすることができれば、フォア面とバック面で違う球種のボールになったり、サービス時に
相手に読まれないように面を変えて打ったりできるので、サービスキープがしやすくなるのではないでしょうか。
>>>その他GEEK通信の記事はこちら>「全豪オープンテニス」
2020シーズン最初のグランドスラムとなる全豪オープン。2019年全豪を制覇し、日本人で初めて世界ランキング1位になった
大坂なおみなど、今年の行方を占うトッププレーヤーたちの熱い戦いに世界中が注目する!
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